ビジュアルアイデンティティ(VI)について

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ビジュアルアイデンティティとは

ビジュアルアイデンティティ(VI)とは、企業やブランドの価値やコンセプトを目に見える形にし、視覚を通してブランドメッセージを伝えるあらゆるデザイン要素を指します。具体的には、ブランドシンボル、ブランドロゴ、カラー、デザインエレメント(ロゴやアイコン以外のグラフィックパターン)、指定書体などのデザイン素材が含まれます。

さらにそれらの素材を活用したWebサイト、宣伝・販促ツール、店舗内装・外装、商品パッケージ&紙袋、制服、名刺、封筒、パンフレットのような印刷物のデザインなどもすべてVIに含まれます。

ビジュアルアイデンティティは企業やブランドのイメージを形成するために非常に重要な役割を果たしており、ビジュアル的な認知度や視覚的な一貫性を高めることによって、消費者に強い印象を与えることができます2。適切なビジュアルアイデンティティを構築することで、企業やブランドの知名度や信頼性を向上させ、市場競争において優位な位置を確立することができます。

例えば、「Apple」のビジュアルアイデンティティはシンプルかつスタイリッシュなデザインが特徴的であり、「Coca-Cola」のビジュアルアイデンティティは赤と白の配色や独自のロゴが特徴的です。これらの企業はビジュアルアイデンティティを効果的に活用し、世界中で高い評価と認知度を得ています。

以上の事から、ビジュアルアイデンティティとは、ブランドの視覚的な表現全般においてその本質=ブランドらしさを形作る一貫性である言えます。ビジュアルアイデンティティを理解することはビジネスにデザインを活かし、ブランドを作っていく上で大切な考え方になりますので、ここではその役割とその効果についてより詳細に解説していきたいと思います。

 

ビジュアルアイデンティティの役割と効果その1
ブランドの第一印象をつくる

 

視覚の優位性

第一印象の大切さは、人のコミュニケーションにおいてよく指摘されることの一つです。とくに初対面では、身だしなみや身振り、話し方など、第一印象がその人の評価に影響することは、就活本やビジネス書などで誰もが一度は触れたことがあるのではないでしょうか。それはブランドにおいても例外ではありません。ユーザーは商品やサービスを認知する際、多くを視覚情報、つまり見た目を頼りに第一印象を決定し一定の判断を下しています。人間の認知において視覚は、ほかの感覚より大きな割合を占めると言われています。(コンタクトレンズで有名なボシュロムの研究によると、視覚から得られる情報量は、聴覚の600倍であるという報告もあります。)

イメージ・印象があたえる影響の大きさ

言うまでもなく、たとえ第一印象が良い人でも能力、実力が伴わなければ継続的な評価を得られないように、中身の伴わない製品・サービスは真の評判を得ることはできません。これは逆に言えば、実力があるにもかかわらず、第一印象が良くないせいで不当な評価をされた場合、それを挽回するために無駄な労力を費やすことも意味します。不正やスキャンダルなどで一度失墜したブランドが再起に非常に困難を伴うという事例は、過去ニュースなどで誰もが一度は目にしたことがあるかと思います。このことは、一度ついたイメージ・印象が、その実質以上に大きく影響することを示しています。実際には、第一印象でそこまで悪いイメージを与えることは考えにくいですが、第一印象を疎かにすることは、後々思わぬ労力を強いられる可能性もあることは考慮にいれておいても良いでしょう。

新規顧客の獲得機会を失っていないか

それでもビジネスはあくまで中身が勝負、実際にそれで成果を出していれば見た目はあまり関係がない、と考えるむきもあるかもしれません。新規ユーザーに対し第一印象に力を入れることは、まだ十分な信用がない状態で見た目を整えることで、いわば「信用の前借り」をしている状態でもあります。また、世の中には見た目だけを整えて中身のない詐欺のような商品も存在することも事実です。そうしたことから、見た目を必要以上に重視しないという考え方は理解できますし、ある意味誠実であるとも言えます。また、商品・サービスのジャンルや種類によっても、見た目が購買意欲や動機に及ぼす影響の度合いは変わります。しかし、見方を変えれば、第一印象を疎かにし適切な見た目を整えないせいで、商品やサービスが持つ本来の価値が伝らず、新規顧客の獲得機会を失っている可能性も否定できません。商品・サービスが持つ本質的な価値とその見た目に一貫性をもたせ第一印象を整えることは、自社のブランドをまだ知らないユーザーとのコミュニケーションギャップを埋め、ファーストコンタクトで適切に認知してもらうことにもつながるのです。

以上のことからも、ブランドの第一印象、見た目の重要性はご理解いただけると思います。

 

ビジュアルアイデンティティの役割と効果その2
強いブランドの印象と、ユーザーの信頼を生みだす

 

ビジュアルアイデンティティにおけるデザインの役割

ビジュアルアイデンティティにおいてデザインは、ユーザーに対して視覚的にブランドを伝えていくための手段となります。ブランドを構成するデザインは分野や業種によって異なり、製品自体のデザインや、ロゴデザイン、パッケージデザイン、WEBや広告等のビジュアルデザイン、店舗デザイン等多岐に渡ります。各デザインには、視覚的表現以外にも、機能やユーザビリティ、知覚品質等、多くの関連領域があります。これらはいずれもデザインを行う上で考慮すべき重要な領域ですが、ビジュアルアイデンティティにおいては先に述べたとおり視覚の優位性に焦点を当て、視覚的表現としてのデザインの役割を重視します。

独自性と一貫した見た目の効果

はじめに述べたとおり、ビジュアルアイデンティティとは、ブランドの本質=ブランドらしさの表現の一貫性のことです。ここで、一貫した視覚的表現が生み出す効果についてわかりやすくするために、ブランドを人に置き換えてみましょう。ブランディングの世界ではブランドは、その共通点の多さからよく人に例えられます。その中でも特に芸能人や芸人さんといった人たちは、しばしば存在自体がアイコンとして扱われることからも、ブランドそのものであると言っても良いでしょう。彼らの個性的で魅力的なルックスは視聴者に強い印象を与え記憶に残ります。彼らは生まれ持った容姿に加え、その魅了を最大限に引き出す服装やメイクを施します。また、芸人さんなどの中には、あえて毎回特徴的な髪型やメガネ、服装をする方もいます。このことは彼らが、演技やトーク、振る舞いといった実力だけでなく、見た目がもたらす効果を十分理解し自らのブランディングに生かしていることを示しています。

一貫性した見た目は信頼、安心を生み出す

ビジュアルアイデンティティを効果的に取り入れているブランドとして、スターバックスを例に挙げてみましょう。今や多くの人に知られているように、スターバックスはシアトル発のアメリカのコーヒーチェーンです。スターバックスは店舗をただコーヒーの飲める「カフェ」ではなく、自宅や職場以外のくつろぎの空間、「サードプレイス」と位置づけています。これは店舗をスターバックスたらしめているブランドの本質でもあります。スターバックスの店舗では、そうしたブランドの本質=スターバックスらしさが、商品、サービス、デザインのあらゆる要素に反映されています。店舗のデザイン面だけに注目してみても、外観やサイン、インテリアデザイン、各種什器、家具、照明、壁面のアートなど、全てが一つの方向性を持ってデザインされており、それらがスターバックスらしい独自の雰囲気を作り上げ、どのお店に行っても一貫して保たれていることがわかります。このような一貫性があるからこそ、ユーザーは安心してお店に入りくつろぐことができるのです。もしこれが、あるお店に入ってみたら、そっけないインテリアのラーメン店のようなお店だったらどうでしょうか。(そっけない店内のラーメン店が悪いと行っているのではありません。)一度でもそのような体験をしてしまうと、次にまた別のお店に行く機会があっても、果たして今回は大丈夫かと入るのを躊躇してしまうかもしれません。このことから、一貫したデザインは、スターバックスらしさを体現する役割を果たすと同時に、ブランドへの信頼や安心を生み出していると言えるのです。

 

ビジュアルアイデンティティの役割と効果その3
ブランド連想を定着させ、愛着を深める

 

ユーザーの期待に応える

ブランディングの世界ではしばしばブランドとは何かを説明する際に「ブランドはユーザーの頭の中にあるものである」と表現することがあります。ブランドとは、ユーザーのブランドにまつわる体験やイメージの総体であり、形のない抽象的な価値であることがそのような表現をする理由です。こうした抽象的な価値の総体がユーザーの頭のなかに想起されることを、ブランド連想と呼びます。例えばいまや誰もが知っているブランドであるアップルと聞いて、リンゴのロゴや、製品群、アップルストアの店内といった具体的なイメージが思い浮べる人は多いはずです。そして、その人がアップルのファンだった場合、その具体的なイメージには共通して「かっこいい」「スタイリッシュ」「ユーザーフレンドリー」などの印象が伴っているはずです。なぜそうなるかと言えば、アップルは製品やサービスの視覚的なイメージにおいても、そうした言葉で表現される「アップルらしさ」というアイデンティを貫いているからです。ブランドとは、ユーザーからの期待に継続して応えることでつくられるものです。それは視覚的なイメージも例外ではありません。アップルがブランドになり得たのは、ユーザーがアップルに求めている期待に、ビジュアル面においても一貫して応えつづけた結果だと言えます。

継続が愛着を生む

再びスターバックスを例に取ってみましょう。スターバックスは日本に上陸してからすでに20年近く経ち、今や国内に1000店舗以上を展開する巨大チェーンとなりました。中には、都心の密集地や高速のSAなど、当初の店舗のように十分な客席のスペースを確保できない小さな店舗やテイクアウトのみの店舗も見受けられます。しかし、店舗は小さくなってもスターバックスらしい雰囲気は一貫して変わらず保たれています。そしてユーザーは変わらずスターバックスを利用しています。この事はスターバックスが、店舗の形態を変えても、商品の品質はもちろんスターバックスらしいデザイン、雰囲気を継続し、一貫して保つことにより、ユーザーの頭の中にブランドのイメージを定着し、ブランドへの信頼と愛着を生みだしていることを示唆しています。「いつものあのお店」を見かけ、「あ、スタバがある」「スタバならOK」となるように、ユーザーの購買意思の決定プロセスを短縮し、購入を促進する状態を作り出しているのです。これはブランドの最終的なゴールであり、ビジュアルアイデンティティが最も効果的に機能している状態であると言えます。

以上、ビジュアルアイデンティティが、ブランドをつくるうえで重要な考え方であることはご理解いただけたのではないでしょうか。ぜひこれらを参考に、ビジュアルアイデンティティという視点をふまえビジネスにデザインを活かしましょう。

最後に私自身は、コーヒーはベローチェ派ということを付け加えておきます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

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