お茶(煎茶)のブランディング(進行中)

お茶の歴史は古く奈良時代に遡る。岡倉天心「茶の本」の冒頭にもあるように、中国から伝わったお茶は薬用として始まり、飲料となり、15世紀には茶道という文化、芸術にまで高められた。茶道は現代でも「習い事」として息づいていはいるが、お茶が持つ文化としての側面は年々失われつつある。昔はどの家庭にもあった急須や湯呑の一式は、ライフスタイルの変化や核家族化でいわゆる「お茶の間」が無くなったことで簡易的なものになった。ペットボトル飲料の出荷量は増加する一方、家庭でお茶を淹れることも少なくなり茶葉の生産量は年々減少している。

このプロジェクトは、時代の変化により人々が忘れつつあるお茶がもつ意味をもう一度問うものである。そのきっかけとして、煎茶に使う茶器を提案する。茶道はお茶を単なる飲料として飲むのではなく、湯を沸かし、茶を淹れ、もてなし、楽しむという一連の体験それ自体に価値を置く。茶道が持つそうした価値は、簡単・便利が加速し、すぐに結果を求めますます慌ただしくなる現代にこそ豊かな意味をもつと考えた。

そこで茶器を単にお茶を飲む器ではなく、お茶を淹れるという行為そのものにフォーカスし、お茶の豊かさ、価値を体験するための現代的なツールとして捉え直す。忙しい毎日の中、スマホを置いて、自分のため、大切な人のためだけに”15分だけ”ゆっくりと、丁寧にお茶を淹れる。これは茶器という”モノ”のデザインではなく、慌ただしい現代における空白の時間がもたらす体験価値のデザインである。

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